2021/12/19
借地権の更新とは?更新できる借地権の種類とその手続きやトラブル例を解説
借地権の更新とは?更新できる借地権の種類とその手続きやトラブル例を解説
土地を借りて建物を建てる借地権は、大きく分けて3種類あり、更新ができるものとできないものがあります。
今回は、更新ができる借地権の種類とその手続き、起こりやすいトラブルについて解説します。
【更新できる借地権の種類とは?】
一般的に取引される住宅用地として取引される借地権の種類は大きく分けて3種類あります。
1992年に成立した借地借家法に基づく借地権(普通借地権・定期借地権)とそれ以前の借地権(旧借地権)があります。
それぞれ、存続期間(契約期間のこと)と更新の可否、期間満了時に借地上にある建物対処などが異なります。
・旧借地権…20年以上・更新可能・建物買取請求可能
・普通借地権…30年以上・更新可能・建物買取請求可能
・定期借地権…50年以上・更新不可・更地で返還
相続する不動産が借地権付きであるという方は、まずは契約の種類を確認する必要があります。
●旧借地権の場合
旧借地権では、建物の構造によって存続期間が異なります。
木造の建物で20年以上、鉄骨造や鉄筋コンクリート造の場合は30年以上となっており、これより短い場合や期間を定めていない場合は、木造建築物が30年、鉄骨造や鉄筋コンクリート造の建物が60年となります。
契約の更新が可能で、更新後の存続期間は初回の契約時と同じ期間となります。
また、再建築による期間の延長や期間満了時に借地上の建物の買い取りを請求することができます。
地主は、これらの請求を正当な理由なく拒否できないため、借地人が希望すれば半永久的に契約の更新されることになります。
●普通借地権の場合
1992年、新しく借地借家法が制定されました。
これ以降に契約された住宅地の借地権は、「普通借地権」か「定期借地権」のいずれかになります。
普通借地権は、旧借地権と同じく更新が可能で、地主は正当な理由なくこれを拒否できません。
存続期間は、建物の構造にかかわらず存続期間は30年以上、期間を定めていない場合は自動的に30年となります。
更新後の存続期間については、旧借地権と異なり、1回目は20年以上、2回目以降は10年以上となっています。
規定より長い場合は、地主と借地人の合意により決定することになります。
期間満了後は、地主に対して建物の買い取りを請求することができます。
●定期借地権の場合
借地借家法の制定で新しく作られたのが、更新のない定期借地権です。
存続期間が50年以上と長めに設定されているかわりに、契約の更新や期間満了後の建物買取請求ができない決まりになっています。
そのため、期間満了後は、解体して更地にして返還する必要があります。
新法制定後に設定された借地権は、一般的に定期借地権がもっとも多くなっています。
【借地権更新の手続き】
旧借地権と普通借地権は更新が可能であることがわかりました。
では、更新するときはどのような手続きがあるのでしょうか。
旧借地権と普通借地権は原則として更新されることになりますが、その方法には3パターンあります。
●更新請求による更新
借地人が地主に請求しておこなう更新の手続きです。
正当な理由がなければ、地主はこれを拒否することはできません。
存続期間や地代などの契約内容は、以前と同じ条件、または法令に合わせた形で契約が更新されます。
なお、借地人からの更新請求には、借地上に建物が存在している必要があります。
●合意更新
地主と借地人が双方合意して進める更新の手続きです。
もっとも一般的な形で、残存期間が少なくなってきた時点で、更新料や更新後の地代について協議し、合意のうえで決定します。
●法定更新
旧借地権・普通借地権であれば、請求や協議をしなくても、法定更新によって自動的に契約が更新されることになります。
ただし、法定更新の成立には以下の3つの要件があります。
・借地上に建物があること
・借地人が借地上の建物を使用していること
・地主が正当な理由に基づいて異議を申し立てていないこと
つまり、建物が老朽化したので更地にしてしまったという場合には、適用されません。
●更新料に目安はあるの?
一般的に、契約の更新には一定の更新料が発生しますが、実は法律で定められているわけではなく、請求されないケースも多くあります。
ただし、契約書に明記されている、協議のうえで合意したという場合は、支払う必要があります。
更新料の目安は、更地で売却した場合の価格と借地権割合によって決まります。
・更新料の目安 = 更地取引価格 × 借地権割合 × 5~10%
つまり、周辺の地価が高騰した場合、当然更新料にも影響するものと考えられます。
ちなみに、借地権割合は地域ごとに決まっており、国税庁のホームページの路線価のページで調べることができます。
●更新しない場合
子どもが独立した場合や、ライフスタイルの変化によって住み替えたいという場合、借地契約の更新をしないという選択肢もあります。
契約を更新しない場合は、借地上の建物の対処が問題になります。
定期借地権では、建物を解体して更地にして返還する必要がありますが、旧借地権と普通借地権では、地主に借地上の買い取りを請求することが可能で、これを「建物買取請求権」と言います。
ただし、どんな建物でも買い取ってもらえるわけではありません。
買取請求の対象となる建物は、法定耐用年数以内(木造建築物は22年、鉄筋コンクリート造は47年)のものに限らており、買取価格は時価となります。
建物の時価は、現在の建築費に残存年数(法定耐用年数ー築年数)を掛けて算出します。
つまり、築20年であれば、ほとんど値段はつかないと考えておいた方が良いでしょう。
建物の築年数が法定耐用年数を超えている場合は、更地で返還するか、そのままの状態で返還するかを地主と協議します。
その際、地主が更地での返還を希望すれば、別途解体費が必要になります。
【借地権更新におけるよくあるトラブル】
ここでは、借地権の更新時によくあるトラブルについて、いくつかの例をご紹介します。
●更新料や地代の値上げを要求されてしまった!
周辺の地価が高騰するケースや、地主が交代し、高額な更新料を請求されるというのはよくあるトラブルです。
更新料や地代の決定には双方の合意が必要なため、必ず支払う義務があるというわけではありません。
しかし、将来建物の建て替えをしたいときや、借地権を譲渡したいときには地主の承諾が必要になるため、地主と関係が悪化することは避けた方が良いでしょう。
弁護士などの専門家に相談し、落としどころを探ることになります。
●借地権の譲渡を承諾してくれない!
借地権を譲渡するためには、地主に承諾してもらう必要があります。
地主との関係が悪化した場合、承諾がもらえないことや、高額な譲渡承諾料を請求されることがあります。
こちらも、弁護士などの専門家に相談し、落としどころを探ることになります。
●相続人同士で揉めてしまった!
借地権に関するトラブルは、地主とだけ起こるわけではありません。
借地権は更新料や地代の負担が大きいため、相続人が複数いる場合は押し付けあいのトラブルになることがあります。
相続人のいずれかが借地権上の建物に住むことが決まっていない場合、トラブルを避けるためにあらかじめ現金化しておくのがおすすめです。
●借地期間がわからない!
旧借地権は半永久的に更新が可能なため、古くから続いているものもあります。
書面による契約である必要がないことから、契約書がない、契約の開始日がわからないといった事例も珍しくありません。
建物登記の建築年月日や、建物所有権の獲得日、戸籍に残っている住民票の獲得日などを参考にして推定し、法律に則って存続期間を確定します。
●借地権の更新を忘れてしまった!
古くから続いている借地契約の場合、相続で地主が交代していることや、どちらかが高齢で更新を忘れてしまうということもあります。
旧借地権・普通借地権の場合は、借地上に建物があれば自動的に法定更新されるため、問題ありません。
定期借地権の場合は、発覚時点で地主と借地人が協議して時期を定め、建物を解体して更地返還します。
【まとめ】
借地権の法改正は約30年前であるため、国内には旧借地権の契約も数多く残っています。
契約期間が長くなるほど、相続などで権利関係が複雑になり、トラブルも発生しやすくなります。
相続する不動産が借地権であるという場合は、契約の種類や内容、地主との関係なども確認しておく必要があります。