2022/01/14
民法等の一部改正法でココが変わる!①
特別受益と寄与分に期限制限ができる!?
●特別受益と寄与分とは
法定相続割合は、相続人が誰であるかによって民法に定められており、遺言等がない「法定相続」の場合に適用されます。例えば、被相続人に配偶者と、子が二人いた場合の法定相続割合は、配偶者1/2,子はそれぞれ1/4ずつとなります。
しかし実際には、相続人の中には、被相続人の生前に何千万ももらっている人や、反対に被相続人にずっと経済的な援助をしてきた人、生活や身の廻りの世話をしてきた人等、さまざまな事情があります。このような場合に、単に法定相続分の規定に従って分けたのでは極めて不公平だと感じてしまいます。
そのような場合に、法律は、特別受益(被相続人から受けた利益)や寄与分(被相続人に与えた利益)という考え方を取り入れ、個別の事情を反映して各自の相続分を修正できる可能性を認めています。
実際の遺産分割の中では「特別受益があったか」が争われることも少なくありません。
特別受益の規定があるため、理論的には生前贈与があってもなくても、被相続人から取得できる財産の総額は変わらなことが原則です。
特別受益権の規定に期間制限ができる
近年、相続紛争が深刻化するケースや、遺産の分け方でもめて何年も遺産分割が成立しないケースが増えています。遺産の最終取得者が決まらなければ、不動産等の有効活用ができなくなったり、預貯金等が塩漬け状態になったりするなど、社会的に大きな悪影響を与えてしまします。そこで、令和3年4月に民法改正が行われました。
この改正のうち、遺産分割についてある期限が設けられました。遺産分割自体に期間制限ができるわけでなく、相続開始から10年を経過した遺産分割については、原則として特別受益と寄与分の規定が適用されないという内容です。何十年も前の特別受益等を争って、いつまでも決着しない相続紛争を防止したい狙いがあります。
最も、遺産分割自体は、話し合い(協議や調停)で全員が納得するのであればどのような分け方をしてもかまわず、法定相続分割合に縛られることはありません。実質的には特別受益等を考慮した分け方採用することが可能であり、その点は10年以上経った相続の場合でも変わりません。
ただし、家庭裁判所が分け方を決める審判の場合では、特別受益等は一切考慮されない分割方法となります。その点にご注意ください。
資料提供:沖田不動産鑑定士・税理士事務所