2022/01/15
民法等の一部改正法でココが変わる!②
相続人で行方不明者がいる場合の遺産分割はどう行うのか?
●遺産分割の参加者は、相続人全員
遺言がなく法定相続となる場合、特別受益等の検討や誰がどの財産を取得するのかを決めるために、遺産分割行う必要があります。遺産分割は、相続人全員が合意すればどのような分割内容でも構いません遺産分割の手続きは、以下3つの方法があります。
①遺産分割協議…相続人が私的な話し合いを行って合意する。
②遺産分割調停…裁判所が間に立って話し合いを行って合意を形成する。
③遺産分割審判…裁判所が職権で分割方法を決定する。
一般的には遺産分割協議でまとめることが多いです。しかし、その場合は不動産登記の変更や金融機関での預貯金の解約・払い戻し等のために、相続人全員の実印の押印のある遺産分割協議書と印鑑証明書の提出が求められます。一方、調停や審判の場合、実印等は不要ですが、調停や審判において相続人全員の出廷がもとめられる上に、裁判所が出す公的な文書が必要です。
●行方不明の相続人がいる
近年、海外移住や住民票の移動を怠ることなどが原因で、連絡を全く取ることができない相続人がいるケースが増加しています。このような場合、そのままでは遺産分を成立させることはできません。その行方不明の相続人のための財産管理を行う公的な代理人(不在者財産管理人)を申し立てにより裁判所に選任してもらい、この不在者財産管理人を当事者として遺産分割を成立させる必要があります・
*不在者財産管理人は通常弁護士等の専門職が選ばれますが、裁判所が認めれば親族がなることもできます。
●令和3年4月21日成立の民法改正で新たな道も
実際には、不在者財産管理人を選任してまで遺産分割をすることは少なく、行方不明の相続人がいる場合には実質的に塩漬け状態の不動産が多いです。そのため令和3年4月の民法改正(公布後2年以内に施行)では、相続開始から10年以上が経過している場合、相続により共有状態になっている不動産については、全体の遺産についての遺産分割ではなく、その不動産だけを売却等するための共有物の分割の手続きが設けられました(この場合、行方不明者の財産権を侵害しないため、その者の共有持ち分に対して取得すべき対価については、供託等をする必要があると定められています)
改正により、今後新たな道が開きますが、行方不明の相続人がいる場合は、遺産分割が非常に困難であることに変わりはありません。専門家に相談して有効な遺言の作成を検討されることをお勧めします。
資料提供…沖田不動産鑑定士・税理士事務所