2023/02/23
自宅の買い換えの際に譲渡損失が生じたらどうする?繰越控除特例とは
自宅の買い換えの際に譲渡損失が生じたらどうする?繰越控除特例とは
自宅の買い換えをおこなった際に、必ずしも売却金額が購入したときの金額を上回るとは限りません。
自宅の売買をおこなった際に損失が発生してしまった場合は、繰越控除などの優遇措置を活用して支払う税額を少なくしましょう。
譲渡損失への控除が適用される要件や、適用外となる条件についても解説します。
【自宅を買い換える際の譲渡損失に対する繰越控除とは】
これまで住んでいた自宅を売却して、新たに住居を購入する場合、多くの場合に損失が発生します。
この損失を「売却損」や「譲渡損失」と呼びます。
とくに旧住居が新築物件の場合は、1日でも入居すると中古物件という扱いになり市場価値は大きく下がります。
住居が購入時に比べて値下がりしていたり、新築物件を購入していたりすると、購入時より安い価格でしか売却できずに、損をすることがあります。
しかし不動産市場を活性化させるために、国は譲渡損失に対して税制面で優遇する特例を設けています。
譲渡損失が生じた場合は、所得税や住民税が軽減される制度を活用できます。
この制度は、所得の利益と損益を相殺することから「損益通算」と呼ばれています。
損益通算してもなおマイナス分が残る場合は、譲渡した翌年以後3年内の総所得金額から繰り越して譲渡損失を控除できる特例があります。
この特例を「マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」といいます。
譲渡した年を合わせるとトータルで4年間、控除を受けられることになります。
所得税や住民税を数年にわたり減額することで、損失分が補える制度です。
譲渡損失が大きい場合は、ぜひ活用したい制度です。
たとえば、所得が300万円の方が自宅の買い換えをおこない、1,000万円の譲渡損失が発生したとすると、繰越控除がどのように適用されるかご説明します。
なお、所得額は毎年変わらないと想定します。
譲渡した年は所得300万円が控除され、所得税・住民税ともに0円になります。
残った譲渡損失の700万円は翌年に繰り越されて、翌年の所得300万円に対する課税はゼロになります。
さらに3年目に譲渡所得400万円が繰り越されて、その年の所得300万円は相殺されます。
そして4年目に繰り越される譲渡損失は100万円となり、その年の課税所得は所得300万円から100万円をマイナスした200万円になります。
このように、損益通算と繰越控除の特例を受けると4年間もの間、減税措置が受けられるので買い換えを検討されている方にとっては税制面で大きなメリットがあります。
そのため、売却価格が安くなり損をしたとしても、悲観することはありません。
ちなみに不動産を売却した際に利益が発生すると、その利益は譲渡所得と扱われ、所得税と住民税が課税されます。
売却で利益が出た分、税金の負担が大きくなるため、売却金額が高いからといって長期的にたくさん資産が残るわけではありません。
自宅の買い換え時は、税金の仕組みを理解しておくと資産計画が立てやすくなります。
また、自宅を買い換えた場合の繰越控除の特例は、住宅ローン控除との併用も可能です。
住宅ローン控除とは、住宅ローンを組んで自宅を購入した場合に、入居から最大13年間にわたり、所得税や住民税から住宅ローン残高の0.7%が控除される制度です。
併用は可能ですが、所得を譲渡損失で相殺したことにより納税額がない場合は、住宅ローン控除の対象にならないので注意しましょう。
先ほどの所得300万円、譲渡損失1,000万円の例で考えると、譲渡の年から3年目までは課税所得がないため控除対象にはならず、4年目に併用して控除を受けられます。
所得が譲渡損失を上回り課税所得が発生する場合に、住宅ローン控除を併用して適用されます。
また、譲渡損失の控除を受けるには、確定申告が必要です。
損失申告用の確定申告書や必要書類を用意して、期日までに税務署に申告することを忘れないようにしましょう。
繰越控除の適用を受ける場合は、該当する年は毎回確定申告をおこないましょう。
譲渡の年に確定申告をしていても、繰越控除を受ける年は再度確定申告をしないと控除が受けられません。
繰越控除の特例は2021年12月31日までに買い換えをおこなった方が対象でしたが、制度が延長されて、期日は2023年12月31日になりました。
次回は繰越控除を受けられる条件についてご説明します。