2021/06/15
売主様が認知症だった場合の取引実例
私のお客様でY様の場合は、資金繰りの都合で土地を手放すことになりました。比較的大きな土地でしたので、査定後、打ち合わせをさせて頂き建売業者による入札方式で買主を決めることになりました。一か月後入札が終わり買受業者が決まりました。細かい契約条件を決めるためにご連絡をしたところ、息子さんが電話に出られて「体調を崩して入院している」との事でした。病状をお尋ねしたところ、あまりいいお返事ではありませんでした。息子さんを通じて医師とお話したところ「意思能力に問題があるようだ」との回答でした。念のため専門医の診断をお願いしました。結果はやはり「単独では契約行為は難しい」との診断でした。買受業者に事情を話し買受順位は守るので契約を延期して欲しいと連絡をしました。息子さんにも事情をはなし、成年後見人の選定の準備をおこなうことになりました。
Y様の場合は、かなりの資産をお持ちの上、会社の代表者にもなっておられました。財産目録等を作成、家庭裁判所に申し立てを行ったところ、「利害関係のある親族は後見人には選定できない。裁判所で後見人を指定します」との連絡がありました。その後弁護士が後見人に指定され、おおよそ一年後に売買契約を締結することができました。金融機関の協力で資金繰りはできましたが(買主が決まっていたから)今回の取引についてもかなりのお金を弁護士に支払い、今後も後見人に決して安くない金額を毎月支払う事になりました。Y様の場合を振り返ってみると任意後見・民事信託・家族信託などを、早めに行っていれば、今回のようなケースは回避できたかもしれません。